"The Lamb Lies Down On Broadway"
はコンセプトアルバムです。
23曲でひとつの物語です。
クレジット上では分かれている曲でもつながっている部分も多い。
これは全体を聴いていただかねば
真価が伝わらない作品です。
1969年のThe Whoの"Tommy"をはじめとして、70年代には多くのコンセプトアルバムが発表されました。The Beatlesの"Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band"のような演出的なコンセプトではなく、"Tommy"のような”物語”があるコンセプトアルバムです。
Camelの"The Snow Goose-1975"、The Whoの"Tommy-1969","Quadrophenia-1973"
と並んで歴史に残るストーリーベースの名作です。
Genesisは名曲・佳曲が多いので、曲単位で考えると他の曲をもっとあげたくなる気もしますが、全曲通して聴くとそんな気持ちはどこかへ行ってしまいます。
ストーリーは彼らのオリジナルで、NewYorkに住むプエルトリコ系の少年ラエルの精神のドラマです。
アルバムの企画段階では”サンテグジュペリ作・星の王子様”のストーリーでつくろうという提案もあったようですが、"Peter Gabriel"が『もはや、ファンタージの時代ではない』と反対し、自ら書き上げることにしたのです。"Tommy"や"Quadrophenia"を意識したところもあったでしょう。その2作と同じように精神世界がテーマになっています。
メンバーの"Tony Banks-Kd"はGenesisの活動の中でこの作品を製作した日々が最も満ち足りたものだったと述べています。その言葉は作品から溢れでる各メンバーの演奏のクオリティーからも感じることができます。しかし、"Gabriel"はこのアルバムを発表して間もなく脱退することをメディアで発表します。
そこでは”音楽業界・ビジネスへの失望”と”家族との時間を持ちたいため”と理由が語られましたが、"Tony Banks-Kd"は後にこう語っています。
『彼は常に人として正しく生きたいと思ってきたが、バンドで音楽を創っていくということは、特にビジネスのことも含めてだと、それがむつかしいことだと感じていた。
あの時、難産の末子供を授かり、妻の状態も必ずしも良くなかった。そんな中で人として、しっかり家族を支えたかったんだ。彼の人生の中でちょっとした休憩が必要だったのさ。』
一部で言われたような不仲での別離では決してないことがわかります。