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名曲千夜一夜物語-707~"Castle Bastards"-Virgil Donati-2019


アルバム"Ruination"収録

Virgil Donati - Drums, Keyboards,

Bass - Junior Braguinha,

Anton Davidyants, Evan Marien

Guitar – Carl Mörner Ringström, Julian Lage, Marco Sfogli, Matteo Mancuso, Andre Nieri


Keyboards – Alex Argento, Joe Chindamo, Steve Hunt, Chris Clark

Vocals – Irwin Thomas, Guitar – Andre Nieri


"Virgil Donati"は1958年にオーストラリアのメルボルンで生まれました。

父はミュージシャンで2歳でドラムセットを与えられ、すぐに父と一緒に

ステージで演奏するようになり、6歳からは、ピアノも学び始めたという

ひじょうに音楽に恵まれた環境で育ったようです。


15歳でオーストラリアでバンドの一員としてデビューし、

16歳からは学校にもかよわなくなり、すべてをドラムとピアノ、音楽を演奏することに

集中させたようです。


19歳でアメリカに渡り、ジャズドラマーのレジェンド"Philly Joe Jones"に師事し、

重ねて打楽器の教育者として多大な実績を残した"Murray Spivack",

ルーディメント奏法の教育を最初にまとめ上げた"Rob Carson"のレッスンも

受けたとのことです。


ドラムのフレージング、楽曲へのアプローチについては"Philly Joe Jones"に、

技術面では"Murray Spivack"とさらに重要なスティックコントロールについては

"Rob Carson"にも学ぶとは、ドラムを極める意味で最善の作です。

ドラムという楽器への理解が19歳ですでに相当なレベルにあったということが

伺えますし、演奏力もすでにかなりのもであったのでしょう。









こちらはアルバム"Ruination"のメイキング映像です。

"Virgil Donati"が電子楽器を使ってギターのパート、ベースのパートなどを

すべてキーボードで弾いてコンピューターで制作し、

その演奏データに基づいて譜面化し、その譜面を見て、

それぞれの演奏家が演奏してつくられたことがわかります。


つまり"Donati"が奏者のインプロビゼイションにまかせるのではなく、

フレーズは完全に自分で作曲した、ということです。

次に、こちらを聴いてみてください。

巨匠”Miles Davis”の1967年のアルバム

"Sorcerer"に収録されている

"Masqualero"と言う曲です。

作曲者はサックスの"Wayne Shorter"

メンバーは

Ron Carter - bass

Tony Williams - drums

Herbie Hancock - piano   です。

聴いた音空間の感触が近いと感じませんか?

勿論フレーズも違うし、テーマも違うのですが、

各楽器同士のフレーズ、拍数の変化など、そのアプローチが

近いと私は感じるのです。


当然のことながら、"Masqualero"はテーマ部分の旋律以外は各メンバーによる

インプロビゼイションの応酬です。

"Virgil Donati"は一般に"Progressive Metal"と呼ばれるジャンルに分けられることが

多いのですが、

"Progressive Metal"なるジャンルの定義も曖昧であることもありますが

代表するバンドが"Rush"や”Dream Theater”であるならば、

これらは”リフ”が楽曲構成の主軸になってるということで"Progressive Hard Rock"です。


しかし"Virgil Donati"の場合は”リフ”ではなく、旋律の組み合わせであり、その旋律は

1拍を2に分けたり3に分けたり、または2と3の合計で変拍子フレーズを

どんどん展開していく音楽です。

いわば、"Sorcerer"に収録されている"Masqualero"のように

ジャズマンが互いの音を聴きながら次々と繰り出す自由なインプロビゼイションで

つくられる『音空間』を書き譜によって創り上げているのです。

だからこれはジャズ史で歴史にのこされた演奏が

どういう"仕組み"になっているのかを突き詰めて理解したうえでの作曲行為です。


"Virgil Donati"の作品としては、2013年には発表されたアルバム"In This Life"が

多くの人に代表作として挙げられることが多いのですが、

そこではまだリフ主体の楽曲構成で

"Progressive Hard Rock"の域をでていないし、それどころか

"Rush"や”Dream Theater”と比較するとリフ自体も、その構成も

難解に寄りすぎていて中途半端なイメージがぬぐえません。


このアルバム"Ruination"で"Virgil Donati"は

"Bop Jazz", "Mode Jazz"の歴史的作品に並ぶ音空間を

『作曲によって具現化する手法』を手にしたように思われます。

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