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名曲千夜一夜物語-319~"Frelon Brun"-Miles Davis-1969

執筆者の写真: jazzdrumclubjazzdrumclub

アルバム"Filles de Kilimanjaro"収録

Miles Davis – trumpet

Wayne Shorter – tenor saxophone

Chick Corea – RMI Electra-piano

Dave Holland – double bass

Tony Williams – drums


composed by Miles Davis



"Dave Holland"が"Miles"と初めて録音した曲。"Chick Corea"と"Dave Holland"は5曲中2曲のみで他3曲はいわゆる第2期黄金クインテットが演奏しています。

~Herbie Hancock(pf),Wayne Shorter(Sax),Ron Carter(Bs),Tony Williams(Ds)~


そちらの演奏では特に"Hancock"のプレイが安定していて素晴らしいのですが

しかし全曲通してこのアルバムで特に光るのは"Tony Williams(Ds)"の演奏です。

どの曲も楽曲としての説得力があるのは"Tony"の演奏が曲の構成を強くサポートしていて、

聴衆が理解しやすいカタチになっているからです。


この曲でも"Tony"の演奏が素晴らしくそれゆえになおさら"Chick"の演奏が貧弱に

聴こえてしまいます。

加入して間もないこともあり探り探り弾いているのかな?とさえ聴こえます。

しかし"Chick"ほどのプレイヤーですからそんなことはないでしょう。いっぽうで

"Holland"は食いついた良い演奏を聞かせています。


このアルバムは全曲を"Miles"が作曲したことになっています。"Shorter","Hancock"作曲の

前作"Nefertiti"や"Joe Zawinul"作曲の次作"In a Silent Way"の方が一般的には評価が高く、

"Miles"の作曲力を低く述べる人もいますが、見当違いです。


"Miles"にとってはインプロビゼイションによるLIVE演奏によって人々に届けて曲が完成形になるのであり、演奏前の段階では素材に過ぎないのです。

ここで完成度の高い演奏をしているHancock(pf)をなぜ"Corea"に変更しなければならなかったのでしょう。


それはHancock(pf)の演奏が先読みできるようになってしまったからだと思います。

完成度は高いけど触発される"意外性"~未知の音空間~を提供してくれなくなってしまった。

それだと音楽が発展していかなくなる

"Miles"はもっと彼が生み出してきた音楽を越えるまだ見ぬ世界を追求したかったのだと思います。

書き譜のように音をつくるならば"Gil Evans"とつくればいい。でもそれもすでにやった。


確かにこのアルバムは過渡期の"Miles"の作品ですが、精神を支えてくれる力をもっているアルバムです。それは意図的ではないからだと思います。この音楽的試行錯誤の結実は

"Bitches Brew"です。


そこでは"Miles"は"Evans"の力も借りて、演奏家個々の演奏力だけで解決しようとしていた点を改めています。だから

"Bitches Brew"にはProgressive Rockの"ELP"の"Tarkus"や"YES"の"Close To The Edge",

King Crimsonの "In The Court Of The Crimson King"のようなアルバムとしての作品性が感じられるのだと思うのです。それこそが"Miles"にとっての作曲です。


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